前の記事 >> 猫の甲状腺機能亢進症ガイドラインについて
注意・免責事項
猫の甲状腺機能亢進症ガイドラインについてでご説明したように、この要約は非専門家によるものであります。
「猫の甲状腺機能亢進症の治療を開始される猫さん・飼い主さんが、私の時より早く、情報に到達するためのヒントになれば」という考えで掲載しております。
実際に治療方針について判断される際は、オリジナルの「2016 AAFP Guidelines for the Management of Feline Hyperthyroidism」をご自身でご確認いただき、本要約についてはあくまで参考に留めてくださいますようお願いいたします。
また、当サイトのプライバシーポリシーについてご理解いただいたうえでお読みくださいますようお願いいたします。
当サイトに掲載されている情報の正確性には万全を期していますが、当サイトは、利用者が当サイトを利用したことにより生じた利用者の損害及び利用者が第三者に与えた損害に関して、一切の責任を負わないものとします。
また、当サイトからのリンクやバナーなどで移動したサイトで提供される情報、サービス等について一切の責任を負いません。
プライバシーポリシーの「免責事項」
「猫の甲状腺機能亢進症の管理のためのガイドライン」の要約
猫の甲状腺機能亢進症の概要
- 1979年の初報告以来、世界中で増加。
- アメリカでは、中高齢猫で最も多い内分泌疾患であり、10歳以上の猫の有病率は10%。
- 甲状腺機能亢進症の猫の大半は両側性であり、初期の知見では、機能性腺腫を摘出すると、反対側の腺腫が発生する可能性があるとされていた。
- 最初の治療で切除手術や放射性ヨウ素治療が選択されなかった場合、腺腫は成長を続け、人間のように悪性腫瘍に至る可能性があることが示唆された。
- 甲状腺機能亢進症の猫のうち、初診時に悪性腫瘍を有するのは2%。
原因
- 複数の因子が関与しているとされているが、それぞれの重要性は不明。
- シャム種とビルマ種は発症のリスクが低いという研究結果がある。
- 猫の飼育方法の変化が有病率に影響を与えている可能性がある(室内飼いの増加、市販キャットフードの利用増加、寿命の延長など)。
- ヒトの場合は年齢が発症の危険因子。
- 疫学的研究が行われ、関連の可能性のある化合物のリストが作成されている。
診断
- 典型的な徴候は、体重減少、多食、多尿、多飲、発声の増加、興奮、活動の増加、頻呼吸、頻脈、嘔吐、下痢、毛並みの乱れだが、所見は個々に大きく異なる。
- 確定診断には典型的な臨床症状1つ以上と、甲状腺ホルモン濃度(T4またはfT4ed)の持続的な上昇が証明されることが必要。
- 肥大した甲状腺が触知されることがある。
治療
- 猫の甲状腺機能亢進症は、生命を脅かす病気であり迅速な治療が必要。
- 治療の目標は、甲状腺の安静を回復させ、甲状腺機能低下症を回避し、治療の副作用を最小限に抑えること。
- 治療には、①放射性ヨウ素治療、②薬物治療(抗甲状腺薬)、③甲状腺摘出術(手術)、④ヨウ素制限食による食事療法の4つの選択肢がある。
- 治療法は、猫の年齢、併存疾患などによって変わる。
- 特に猫が若く健康であれば、放射性ヨウ素治療や甲状腺摘出術を行うことが多い。
- 老齢の猫、甲状腺以外の病気(特にCKD)を併発している猫の場合、抗甲状腺薬の長期投与やヨウ素制限食が選択肢となる。
- 手術前には抗甲状腺薬で甲状腺機能回復の前処置を行うことが一般的。
放射性ヨウ素治療
- アメリカにおいては、ほとんどの猫に対して行われている治療法。
- 専用の施設や技能が必要だが、全ての異常細胞を死滅させることが出来、副作用が少なく再発率が低いなどのメリットがある。
※補足:2022年11月現在、日本では行うことができない。
薬物療法
抗甲状腺薬 メチマゾール(メルカゾール・チアマゾール)とは
- 抗甲状腺薬は、長期的な単独治療として、または手術の前に患者を安定させるために短期的に行うことができる。
- 甲状腺機能亢進症の治療薬として、メチマゾール(補足:日本ではメルカゾールもしくはチアマゾールと呼ばれている)が動物用医薬品として認可されている。
- メチマゾールは甲状腺ホルモンの生合成を抑制する。
- メチマゾールの投与は、猫1匹あたり1.25~2.5mgを1日2回投与することから開始する。
- 1日2回投与で甲状腺機能が回復した後、1日の総投与量を1日1回にまとめて投与することは可能(飼い主の投薬の負担軽減)。
- 1日2回投与は、1日1回の高用量よりも重篤な副作用と関連性が低い。
- ほとんどの場合、抗甲状腺薬投与開始後2~3週間で甲状腺機能が回復するため、その後はT4値をモニターする必要がある。
- 10mg/日を超える投与が必要な場合は、正しく服薬できているか疑問視すべき。
- T4値が基準値以下に下がった場合は1.25-2.5mg/日ずつ減薬し、1週間後にT4と腎臓のパラメーターを再確認する。
副作用
- メチマゾールの副作用で最も重篤なものは、肝障害と著しい血液異常(重度の白血球減少、貧血、血小板減少)であるが、稀にしか発現しない。胃腸の不調、嗜眠、顔面そう痒症は、発生頻度にばらつきがある。
- 副作用の発生、頻度および重症度は、投与量との関連は認められていない。
- ほとんどの副作用は、治療開始後4~6週間以内に現れ、治療開始後2~3ヵ月を経過すると少なくなる。
期待される効果
- ほぼ全症例で病状のコントロールに成功する。
- 投薬与後1週間以内にT4値は反応する。
- 2~6週の間、T4値が基準間隔内に維持されない場合、治療に対する臨床的反応は見られない可能性がある。
- メチマゾールは甲状腺の過形成組織や腺腫組織を破壊しないため、メチマゾールを投与している間、異常組織は時間とともに徐々に成長する。
- 機能性甲状腺結節の大きさ、体積、数は病気の期間に比例して増加するため、チマゾールの投与量を徐々に増やす可能性がある。
- 最終的には、メチマゾールの増量に耐えられなくなる猫もいる。
コメント